近年、デジタルマーケティングの世界では多くの広告手法が登場していますが、中でも「リターゲティング広告」は特に注目を集めています。オンラインショッピングなどで一度興味を示した商品やサービスに再び広告で出会った経験はありませんか?それがリターゲティング広告です。
この広告手法は、ユーザーの興味や行動に応じてパーソナライズされた広告を提供することで、より効果的なコンバージョンを促進します。しかし、どのようにしてこれが実現されるのでしょうか?本記事では、リターゲティング広告の基本からその効果、活用方法までを詳しく解説します。
リターゲティング広告とは?
リターゲティング広告とは、一度あるウェブサイトやアプリを訪れたユーザーに対して、再度その商品やサービスをアピールするためのディスプレイ広告の配信手法です。これにより、購入を迷っていたユーザーや、何らかの理由で購入を完了しなかったユーザーを再びサイトに引き戻すことができます。
リターゲティング広告については「リタゲ」と略されたりします。また特にGoogle広告ではリマーケティング広告という名称で「リマケ」とも言われています。呼び方は異なるものの、同じ広告手法を指しています。
リターゲティング広告の仕組み
リターゲティング広告が配信される仕組みは、ウェブサイトやアプリの訪問者の行動をトラッキングすることから始まります。訪問者がサイトやアプリにアクセスすると、そのデバイスに「クッキー」と呼ばれる小さなデータファイルが保存されます。このクッキーには、ユーザーの訪問履歴や閲覧した商品、行った行動などの情報が記録されています。
リターゲティング広告は、このクッキーの情報を基に、ユーザーが以前に関心を示した商品やサービスに関連する広告を他のウェブサイトやアプリで表示します。例えば、あるオンラインショップでシューズを閲覧した後、ニュースサイトやSNSでそのシューズの広告を見ることがあります。これがリターゲティング広告の基本的な仕組みです。
引用:Yahoo公式ヘルプ
配信までのやり方・手順
リターゲティング広告の仕組みからも分かる通り、通常の広告では利用しないクッキーをデータとして保存するために、媒体社から発行されるリターゲティングタグを設置しなければなりません。以下ではリターゲティング広告のやり方や配信手順について簡単に解説します。
- 目的の明確化
まず、リターゲティング広告を実施する目的を明確にします。例えば、カート放置ユーザーへの再訴求や特定の商品のプロモーションなど。 - リターゲティングタグの設置
リターゲティング広告を配信するためには、サイトに特定のリターゲティングタグ(媒体によって異なる)を設置する必要があります。このタグにより、ユーザーの行動や興味を追跡します。またコンバージョンを計測する際にはコンバージョンタグの設置をしてください。 - ユーザーリストの作成と蓄積
タグの設置後はサイト訪問ユーザーにクッキーの付与が開始されます。一定のユーザー数がいなければ配信が開始されない場合もあるため、蓄積する期間が必要です。蓄積ができたら、訪問したページや期間によってセグメントし、ターゲットにしたいユーザーリストを作成します。 - 広告クリエイティブの作成
ターゲットとなるユーザーリストに合わせて、魅力的な広告クリエイティブを作成します。 - 広告配信
タグを通じて収集されたデータを基に、リターゲティング広告を配信します。広告の審査もあるため、なるべく十分な余裕をもって配信スケジュールを設定しましょう。 - 効果測定
広告のクリック数やコンバージョン数など、KPIをもとに広告の効果を測定します。ユーザーが蓄積されていない、あるいは少ない場合には、配信ができない場合もありますので、確認するようにしましょう。 - 最適化
広告の配信結果を基に、広告の内容や配信方法を改善していきます。複数のクリエイティブをテストして、より広告効果が高まる工夫をするようにしてください。
今後の規制
しかしながら、デジタルマーケティングの世界で注目されているのが、ブラウザによるクッキーの規制です。特にAppleのブラウザ「Safari」に実装されている「ITP(Intelligent Tracking Prevention)」は、ユーザーのプライバシー保護を目的とした機能で、2017年に初めて導入されました。
このような流れにより、クッキーを活用したリターゲティング広告の配信が難しくなっておきます。今までのデジタルマーケティングの概念が大きく変わりつつあり、クッキーに頼らない新しいマーケティング手法の開発や、オウンドメディアでの顧客情報の管理・分析、ソーシャルメディアの活用が今後のキーとなるでしょう。
リターゲティング広告の費用や料金相場
リターゲティング広告は媒体によって費用や料金体系が異なりますが、Google広告やYahoo広告のような代表的な媒体ではクリック課金となっていることが多いと言えます。クリック課金では広告がクリックされた時に広告費用が発生するものですので、それまでは無料で広告配信をすることが可能です。
またオークション制(入札制)となっているものが多いことから、クリック単価は一定の金額ではなく、競合他社とのオークションによって決定されます。リターゲティング広告であれば、100円未満でおさまることも多いのですが、予算やアクセス数などによって変わってきますので、配信後にクリック単価を抑えられるように調整を行っていくようにしましょう。
リターゲティング広告を含む運用型広告の場合、最低利用料金のような取り決めはありませんので、広告主が自分で設定して配信を管理するようであれば、少額でも問題ありません。広告代理店に依頼するような場合には、各社で規約が定められていますので、広告運用代行サービスを発注する際には確認しておくと良いでしょう。
リターゲティング広告の種類をチェック!
リターゲティング広告にもいくつかの種類がありますので、どのリターゲティング広告が自社のマーケティングに適しているか検討をしてください。
通常のリターゲティング広告
通常のリターゲティング広告では、管理画面上で設定したテキストや静止画、動画のクリエイティブを配信します。
動的リターゲティング広告
動的リターゲティング広告とは、閲覧したページに合わせて動的なクリエイティブを配信するリターゲティング広告のひとつです。商品Aのページを閲覧したユーザーにはAの広告を、商品Bのページを閲覧したユーザーにはBの広告を配信することで、高い広告効果が期待できます。
検索広告向けリターゲティング広告
リターゲティング広告というとディスプレイ広告やSNS広告が一般的ですが、検索広告でも実現することが可能です。検索広告向けリターゲティング(Remarketing List for Search Ads:RLSA)と呼ばれる機能です。
リターゲティングリストのユーザーが特定のキーワードを検索したときにだけ表示させることができるため、よりコンバージョン率が高い検索広告の配信が可能になります。もしくはリターゲティングリストのユーザーの場合は入札単価を引き上げるなどの調整が可能です。
その他のリターゲティング広告
GoogleAnalyticsとGoogle広告アカウントを連携させることで、GoogleAnalyticsで蓄積したリマーケティングリストを広告配信に利用できます。特定のイベントが発生したユーザーをリストにできるため、通常のリターゲティング広告よりも細かい設計が可能です。
Youtubeで動画を公開している場合には、動画を視聴したユーザーやチャンネル登録ユーザーなどをリマーケティング広告のリストとして配信することも可能です。Youtube動画広告を配信して視聴したユーザーをリマーケティング広告で刈り取るという手法も効果的だと考えられます。
Yahooディスプレイ広告では「広告アクションユーザーターゲティング」があります。指定した広告に対してクリック、コンバージョン、動画視聴といった広告アクションをしたユーザーをリストにして広告配信に利用ができます。
FacebookやInstagram、XなどのSNS広告では、フォロワーや投稿へのアクションをしたユーザーをリストにして広告配信をすることなどが可能です。正確にはリターゲティング広告ではないのですが、自社商品やサービスに高い興味関心を持っている点では共通です。ターゲティングの詳細については媒体によって異なるため、仕様をよく確認するようにしましょう。
なぜリターゲティング広告が効果的なのか?そのメリットは何か
リターゲティング広告は、オンラインマーケティングの戦略の中で非常に効果的とされています。過去に訪問したことがあるユーザーにターゲットを絞ることが、なぜ効果的なのかについは以下の観点から考えることができます。
既知の顧客へのアプローチ
リターゲティング広告は、ウェブサイトを一度訪れたが購入やアクションを完了しなかったユーザーに再度アプローチします。これにより、ブランドや製品への関心が既にあるユーザーに焦点を当てることができます。
高いコンバージョン率
既に関心を示しているユーザーに対して広告を表示するため、リターゲティング広告のコンバージョン率は通常の広告よりも高くなります。
ブランド認知の強化
ユーザーが何度も同じ広告を見ることで、ブランドの認知度が向上します。これにより、長期的なブランドロイヤルティの構築が期待できます。
カスタマイズされたメッセージ
リターゲティング広告は、ユーザーの過去の行動や興味に基づいてカスタマイズされたメッセージを提供することができます。例えばAの商品を見た人にはAのクリエイティブを、Bの商品を見た人にはBのクリエイティブを配信します。これにより、ユーザーにとって関連性の高い広告を表示することが可能です。
予算の効率的な使用
リターゲティング広告は、特定のターゲット層に焦点を当てるため、広告予算を効率的に使用することができます。広告効果の高いリターゲティング広告に予算を投下することで、全体的なオンラインマーケティングの効果を高めることができます。
継続的なエンゲージメント
ユーザーがウェブサイトを離れた後も、リターゲティング広告を通じてブランドとのエンゲージメントを継続することができます。
これらの理由から、リターゲティング広告は多くの企業にとって価値のある投資となっています。正確なターゲティングと適切なメッセージングを組み合わせることで、リターゲティング広告の効果を最大化することができます。
リターゲティング広告を配信できる広告運用媒体(メディア)
リターゲティング広告を配信できる広告運用媒体(メディア)は多岐に渡ります。そのうちの代表的なものを以下に紹介していきます。
Google広告
Google広告では検索広告、ディスプレイ広告、動画広告(Youtube広告)などのキャンペーンタイプがありますが、いずれのキャンペーンでもリターゲティングが可能です。Google広告ではリターゲティング広告のことを正しくは「リマーケティング広告」と言います。
検索広告のリマーケティングを特にRLSA(Remaeketing List for Search Ads)と言います。
リマーケティング配信が可能なGoogleディスプレイ広告については下記の記事をご覧ください。
Yahoo広告
Yahoo広告では検索広告、ディスプレイ広告とあり、どちらもリターゲティング広告の配信が可能です。日本最大級の広告媒体になりますので、非常に多くの広告在庫があり、リターゲティング広告においても高い成果が期待できます。
Meta広告
Meta広告ではSNSとして代表的なFacebookやInstagramに広告を配信できます。Meta広告においてもリターゲティング広告の配信が可能で、同じ広告を何度も見た方は多いのではないでしょうか?
X(旧Twitter)広告
X(旧Twitter)広告でもリターゲティング広告の配信が可能です。匿名性のSNSとして現在でも人気のあるメディアですので、高い集客力があるのが大きな特徴です。
LINE広告
改めて紹介する必要もないかと思いますが、日本での高い利用率を誇るLINE広告を配信することで、さらにリーチを拡大することができます。リターゲティングについても他の媒体を組み合わせて利用しても効果的な運用ができるでしょう。
その他
Microsoft(マイクロソフト)広告やPinterest(ピンタレスト)広告など、後発組の広告運用媒体においてもリターゲティング広告は配信できます。その他にもDSPやアドネットワークなど、各プラットフォームでもリターゲティング広告ができるところは多くなっています。
リターゲティング広告の注意点とデメリットを知っておこう
リターゲティング広告は非常に効果的な戦略である一方で、適切に実施しないと逆効果になることもあります。それはリターゲティング広告のデメリットとして認識しておくべきでしょう。以下は、リターゲティング広告を実施する際の主な注意点です。
ユーザー数の少ないサイトでは広告配信できない
リターゲティング広告ではサイト訪問者を広告配信リストとして指定しますが、サイト訪問者が少ない場合には配信することができません。特にサイトを公開して間もない場合やリターゲティングタグを設定して間もない場合には広告配信リストが少ないため、しばらくはアクセスが増加してリストが蓄積されるのを待つ必要があります。
広告表示の頻度を調整して、適切にリーチする
同じユーザーに対して広告を過度に表示すると、広告の効果が薄れるだけでなく、ブランドに対するネガティブな印象を与える可能性があります。適切な頻度での広告表示を心がけることが重要です。
広告表示の頻度を調整することをフリークエンシーコントロールと呼びます。広告の目的によって適切な頻度は異なり、例えば認知を獲得するためなら高頻度に、すでに認知が獲得できていれば低頻度にするなどの調整を行うと良いでしょう。
ターゲットに合わせたセグメンテーションをする
すべてのユーザーが同じ興味やニーズを持っているわけではありません。ユーザーの行動や興味に基づいて広告をセグメント化し、それぞれのセグメントに合わせたメッセージを提供することが効果的です。
特に複数の商材を持っている企業において、それぞれターゲットが異なる場合には、リターゲティングの対象を切り分ける必要があります。
定期的に広告内容を更新する
常に同じ広告内容を繰り返し表示すると、ユーザーの関心を失う可能性があります。定期的に広告のデザインやメッセージを更新し、新鮮さを保つことが重要です。リターゲティングの効果が低下してきた場合には、新しいクリエイティブを追加してみてください。
除外リストの活用する
すでに製品を購入したユーザーや、特定のアクションを完了したユーザーをターゲティングから除外することで、無駄な広告費を削減することができます。
プライバシーの尊重する
リターゲティング広告の今後の規制について解説した通り、ユーザーのプライバシーを尊重し、透明性を持ってデータを取り扱うことが必要です。特に、クッキーの使用やデータの収集に関する規制が強化されている現代において、適切な情報提供と同意の取得が不可欠です。
広告の品質を保つ
リターゲティング広告も、他の広告と同様に、高品質なデザインやメッセージが求められます。ユーザーにとって魅力的で関連性の高い広告を提供することで、効果的なリターゲティングを実現できます。
通常の広告と同じですが、クリック率やコンバージョン率の低い広告は停止し、新しいクリエイティブを追加していきます。ABテストを繰り返し行い、より高い広告効果が表れるようにしてください。
測定と最適化をしていく
リターゲティング広告の効果を定期的に測定し、必要に応じて戦略を最適化することが重要です。これにより、広告のROIを向上させることができます。
リターゲティング広告を配信して効果がなかったからといって、諦める必要はありません。上記のような点を考慮して、改善していくことで成果につながる可能性がありますので、是非お試しください。
リターゲティング広告の具体的な改善方法
リターゲティング広告の効果が悪い場合には以下のような施策を検討してみてください。
フォーム遷移ユーザーリストを作成する
リーセンシーの短いユーザーリストを作成する
見込みの高い流入元のユーザーリストを作成する
カート追加ユーザーをリターゲティングリストにする
ECサイトであればカート機能があるため、カートに追加されたユーザーをリターゲティングリストにして、広告を配信してみてください。既にカートに商品が入っている状態ですので、他のオーディエンスリストとは異なり、興味関心度の高いユーザーと言えます。
フォーム遷移ユーザーをリターゲティングリストにする
カート追加ユーザーと同様にフォームに既に遷移したユーザーも興味関心度が高く、コンバージョンに至りやすいユーザーであると言えます。フォーム遷移ユーザーをターゲットにすることでリターゲティング広告の改善につながりやすいと考えられます。
リーセンシーの短いリストにする
リーセンシーとは簡単に言えば「いつ訪問したのか」というWebサイトに訪れてからの期間を表します。リーセンシーが短い、つまり最近の訪問者の方が興味関心度が高く、コンバージョンしやすい傾向にあります。リーセンシーの短いリターゲティングリストを作成して、広告を配信してみてください。
見込みの高い流入元のユーザーをリストにする
ディスプレイ広告などの潜在層向けの広告を行っている場合には、興味関心度の低いユーザーもリターゲティングのリストに含まれてしまっている可能性があります。見込みの高い流入元からのリターゲティングリストを作成することで、広告効果の改善につながるものと考えられます。
流入元別にリターゲティングリストを作成するには、utmパラメータで指定するか、あるいはGoogleAnalyticsとGoogle広告アカウントを連携することで実現可能です。
リターゲティング広告の運用はお任せください
本サイト「デジタライズラボ」を運営している株式会社ワンエイティでは、広告の運用代行事業を行っています。もちろん、リターゲティング広告についても取り扱い可能ですので、是非お問い合わせください。
またリターゲティング広告に必要なバナークリエイティブやランディングページの制作についても承っております。ウェブマーケティングに必要なソリューションをワンストップで提供可能ですので、お困りのことがございましたら、ご相談ください。
\リターゲティング広告について相談する/
まとめ:リターゲティング広告を活用していきましょう
リターゲティング広告は、一度興味を示したユーザーをターゲットにした広告手法であり、適切に活用することで高いコンバージョン率を期待することができます。しかし、ユーザーの反応を常に分析し、最適な広告配信を心がけることが成功の鍵となります。