近年、ホテル業界ではオンライン予約が主流となり、集客のためのデジタルマーケティングがますます重要になっています。その中でも、リスティング広告(検索連動型広告)は、見込み客に直接アプローチできる効果的な手法です。
しかし、適切な運用ができていないと「広告費がかかるばかりで予約につながらない」「競合が多くて思うように成果が出ない」といった課題に直面することも少なくありません。
本記事では、ホテル業界向けに特化したリスティング広告の運用ノウハウを公開し、広告費を無駄にせず、予約数を最大化するための具体的な方法を解説します。
以下のような方には是非ご覧いただきたいと思います。
- 自社のホテル・旅館の予約数を増やしたい経営者・マーケター
- リスティング広告を始めたいが、何から手をつければよいかわからない方
- すでに広告を運用しているが、より効果的な方法を知りたい方
この内容を実践すれば、広告の無駄を削減し、費用対効果の高い運用ができるようになります。次章では、まずリスティング広告の基本とホテル業界における活用メリットを詳しく解説していきます。
ホテル業界におけるリスティング広告の基本
まずは、リスティング広告の意味やメリット、その他の集客との比較などを解説していきます。ホテル業界におけるリスティング広告の基本的な知識になりますので、これから始めようとしている方は、十分に知っておいてください。
リスティング広告とは?(Google広告・Yahoo!広告の概要)
リスティング広告とは、検索エンジン(GoogleやYahoo!)でユーザーが特定のキーワードを検索した際に、検索結果の上部や下部に表示される広告のことを指します。例えば、「東京 ホテル 予約」と検索した際に、検索結果の最上部に表示される広告がリスティング広告です。
Yahoo!リスティング広告(Yahoo!検索広告)とは?活用するメリットや設定方法・始め方を解説!
Googleリスティング広告(検索連動型広告)とは?広告の仕組みや費用を徹底解説
この広告は、検索ユーザーが興味を持ちそうなキーワードに基づいて表示されるため、潜在的な顧客に直接アプローチできる点が大きな強みです。特に、ホテル業界では「宿泊予約を検討しているユーザー」に対してピンポイントで広告を表示できるため、高い集客効果が期待できます。
ホテル業界での活用メリット
リスティング広告がホテル業界に適している理由はいくつかあります。
予約意欲の高いユーザーにアプローチできる
宿泊施設を探しているユーザーは、すでに「泊まる場所を探している」という明確なニーズを持っています。検索キーワードに基づいて広告を表示できるため、ターゲット層に対して高い確率でリーチできます。
短期間で集客が可能
SEO(検索エンジン最適化)と比較すると、リスティング広告は即効性があるのが特徴です。広告を出稿すれば、その瞬間から検索結果に表示されるため、新規の集客施策として非常に有効です。
予算を自由にコントロールできる
広告予算を調整しやすく、閑散期には広告費を抑え、繁忙期には積極的に出稿するなど、状況に応じた柔軟な運用が可能です。また、クリック課金制(CPC:Cost Per Click)のため、実際に広告がクリックされるまで費用が発生しないのも魅力です。
他のOTA(オンライン旅行代理店)に依存しない集客ができる
多くのホテルや旅館は、楽天トラベルやじゃらんなどのOTA経由で集客を行っていますが、これらのプラットフォームは手数料がかかるため、利益率が下がることが課題です。
リスティング広告を活用すれば、公式サイトへの直接予約を増やすことができ、OTAの手数料を削減できます。
他の集客手法(SEO・SNS広告)との比較
リスティング広告とその他の集客手法を比較すると、それぞれに異なる特性があります。
手法 | メリット | デメリット |
---|---|---|
リスティング広告 | 即効性があり、検索意図の高いユーザーにアプローチ可能 | クリック課金のため、継続的な費用が発生する |
SEO(検索エンジン最適化) | 長期的な資産になり、無料で流入を増やせる | 効果が出るまで時間がかかる、検索順位が変動する |
SNS広告(Facebook・Instagramなど) | ビジュアルで魅力を伝えやすく、ターゲティング精度が高い | 宿泊を検討していないユーザーにも配信されるため、コンバージョン率が低くなりがち |
このように、リスティング広告は「短期間で効果を出しやすく、検索意図の強いユーザーにピンポイントでアプローチできる」点で、ホテル業界に適した集客手法だと言えます。
Googleホテル広告もオススメ
Google広告にはリスティング広告の他に、Googleホテル広告というホテル業界に特化しキャンペーンもあります。Googleホテル広告を利用することで、効率的な予約獲得ができますので、非常にオススメです。詳しくは下記の記事をご覧ください。
次は、より具体的な「効果的なリスティング広告の設計方法」について解説します。適切なキーワード選定や広告文の作成方法を学ぶことで、より効果的な広告運用が可能になります。
ホテル業界での効果的なリスティング広告の設定
リスティング広告を成功させるには、「適切なキーワードの選定」「魅力的な広告文の作成」「コンバージョン率の高いランディングページ(LP)の最適化」が重要です。以下では、それぞれのステップで押さえておくべきポイントを詳しく解説します。
キーワード選定のポイント
リスティング広告の効果を最大化するためには、ターゲットユーザーが検索するキーワードを適切に選ぶことが重要です。
予約意欲の高いキーワード(例:「〇〇ホテル 予約」「温泉宿 直前割」)
ホテル業界では、「宿泊予約をする可能性が高いキーワード」を選ぶことが成功の鍵です。以下のようなユーザーの検索意図が明確なキーワードを狙うと、コンバージョン率(CVR)が向上します。
【狙うべきキーワード例】
キーワードカテゴリ | 例 | 特徴 |
---|---|---|
地域+ホテル | 「東京 ホテル 予約」 | 検索意図が明確でCVRが高い |
観光地+宿泊施設 | 「箱根 温泉宿 格安」 | 旅行先を探している層を狙える |
目的別検索 | 「カップル向け ホテル」 | 特定のニーズに対応しやすい |
特典・割引 | 「ホテル 直前割」 | 価格重視の層を取り込める |
特に、「地域名+ホテル 予約」「温泉宿 おすすめ」などのキーワードはCVRが高いため、積極的に活用しましょう。
競争率の高いキーワード vs. ロングテールキーワード
競争が激しいビッグキーワード(例:「東京 ホテル」)だけでなく、より具体的なロングテールキーワード(例:「新宿 駅近 格安 ホテル」)を狙うことで、競合を避けながら予約率を向上させることができます。
除外キーワードの設定
無駄なクリックを防ぐために、「無料」「バイト」「評判」など、コンバージョンに繋がりにくいキーワードを除外すると広告費を効率的に使えます。
広告文の作成テクニック
リスティング広告は、検索結果ページで「広告文」を見たユーザーがクリックすることで効果を発揮します。クリック率(CTR)を高めるためのポイントを紹介します。
クリック率を高めるタイトルの付け方
広告のタイトルは、検索ユーザーが最初に目にする重要な部分です。魅力的なキャッチコピーを入れることでクリック率を向上させることができます。
効果的な広告タイトル例
- 「【公式サイト最安値】新宿駅徒歩3分|今なら10%OFF」 → 「公式」「最安値」「割引」などの特典を強調
- 「箱根温泉宿|カップルに人気の露天風呂付き客室」 → ユーザーのニーズに合わせた訴求
- 「本日限定!東京ホテル直前割|最大30%OFF」 → 限定性を強調し、即時予約を促す
限定性・緊急性を活用(例:「本日限定割引」)
広告文には、「安心感」「特典」「緊急性」を意識して入れるとクリック率が高まります。
- 「公式サイトならベストレート保証」(価格メリットを伝える)
- 「本日予約で朝食無料」(特典を明確に伝える)
- 「あと3室!早い者勝ち」(希少性・緊急性をアピール)
広告表示オプションを活用する
Google広告では、サイトリンク・電話番号・レビュー評価などを追加できる「広告表示オプション」があります。視認性を高め、ユーザーの関心を引くために必ず設定しましょう。
ランディングページの最適化
せっかくクリックされても、ランディングページ(LP)が最適化されていなければ予約につながりません。LPを改善することでコンバージョン率を大幅に向上できます。
コンバージョン率を上げるデザインと構成
ホテルの魅力を伝えるために、以下の要素を明確に記載しましょう。
- 料金・割引情報(「公式サイト最安値」「特別割引」など)
- 立地・アクセス情報(駅から徒歩○分、周辺の観光スポットなど)
- 部屋の写真・設備情報(清潔感のある写真を掲載)
- 口コミやレビュー(安心感を与える)
モバイル最適化(スマホユーザーへの対応)
旅行の予約はスマートフォンから行われることが多いため、スマホ対応のページを用意することが不可欠です。特に、以下のポイントに注意しましょう。
- ボタンを大きくし、タップしやすくする
- 予約フォームをシンプルに(入力項目を最小限に)
- ページの読み込み速度を最適化(表示が遅いと離脱率が上がる)
予約完了までの導線をシンプルに
ユーザーが迷わずに予約できるように、CTA(Call To Action:行動喚起)を明確にすることが重要です。
- 「今すぐ予約する」ボタンを目立たせる
- 予約プロセスを3ステップ以内にする(例:日程選択 → 部屋選択 → 支払い)
- 「あと〇室」などの希少性をアピール
費用対効果を考えたリスティング広告運用と改善のポイント
リスティング広告は、適切に運用・改善を行うことで、費用対効果を最大化し、無駄な広告費を削減しながら予約数を増やすことが可能です。以下では、「入札戦略と予算配分」「効果測定と改善方法」の2つの視点から、広告運用の最適化方法を解説します。
入札戦略と予算配分
リスティング広告では自動入札の精度が高まっており、手動で運用をしなくても最適化が進むようになっています。特にコンバージョンの獲得ができデータの蓄積ができている場合には有効です。コンバージョンのデータが十分でなければ手動で入札単価を管理することで、適切な集客を促すことにつながります。
また繁忙期には予算を引き上げて広告の露出を高めることで、売上の増加が期待できます。毎月、決まった予算で運用するのではなく、戦略的に考えていく必要があるでしょう。
入札戦略を予算配分について、具体的には以下の通りです。
ホテル業界に適した入札戦略(目標コンバージョン単価制・クリック単価制)
リスティング広告では、どのように広告費を使い、どの入札戦略を選ぶかが成果を大きく左右します。ホテル業界で効果的な入札戦略を紹介します。
入札戦略 | ||
---|---|---|
目標コンバージョン単価(tCPA) | 予約1件あたりの目標コストを設定し、それに基づいて入札を自動調整 | 過去のデータがあり、コンバージョン(予約)が一定数ある場合 |
クリック単価(CPC)手動入札 | 1クリックごとの単価を手動で調整 | 初期段階で広告のパフォーマンスを細かく調整したい場合 |
目標広告費用対効果(tROAS) | 広告費に対して得られる収益を最大化するよう自動調整 | 収益データがあり、ROIを最適化したい場合 |
新規広告運用時は「CPC手動入札」で調整し、成果が安定したら「tCPA」や「tROAS」に移行するのがベスト
「地域+ホテル 予約」など競争率の高いキーワードは高めに入札し、クリック率が低いキーワードは入札額を調整
シーズナリティを考慮した予算管理(繁忙期・閑散期の調整)
ホテル業界では、季節やイベントに応じて検索ボリュームや予約率が大きく変動します。そのため、時期ごとの需要に応じて広告予算を調整することが重要です。
時期 | 広告予算の調整方法 |
---|---|
繁忙期(GW・夏休み・年末年始など) | 予算を増やし、積極的に広告を出稿 |
閑散期(1月・2月など) | 予算を抑え、特定のターゲットに絞る |
直前割引のタイミング | 「直前予約」「当日割引」などのキーワードに特化し、入札額を上げる |
効果測定と改善方法
リスティング広告は運用型広告と言われるように定期的な分析や改善が必要になります。しっかりと効果を測定しつつ、課題に対する改善方法を考えて実行していかなくてはなりません。どのように改善していくかについて以下に解説していきます。
主要指標(CTR・CVR・ROAS)の分析方法
広告運用の改善には、データ分析が不可欠です。以下の3つの指標を定期的に確認し、広告のパフォーマンスを最適化しましょう。
指標 | 意味 | 改善ポイント |
---|---|---|
CTR(クリック率) | 広告が表示された回数に対して、何%クリックされたか | タイトルや広告文を改善し、より魅力的な訴求をする |
CVR(コンバージョン率) | クリック数に対して、何%が予約に至ったか | ランディングページを最適化し、予約しやすい導線にする |
ROAS(広告費用対効果) | 投資した広告費に対して、どれだけの売上を得たか | 入札単価を調整し、利益率の高いターゲットに絞る |
- CTRが低い → 広告文を改善し、特典や限定性を強調
- CVRが低い → LPのデザインや予約の流れを見直し、スムーズな導線を作る
- ROASが悪化 → 広告のターゲットを見直し、不要なキーワードを除外
A/Bテストの実施(広告文・ランディングページの比較)
スティング広告の成果を最大化するには、複数の広告パターンを試し、最も効果の高いものを選ぶ「A/Bテスト」が有効です。
A/Bテストの具体例
広告文のABテストではテキストのパターンをいくつか追加することで、自動的に最適化されるようになります。
- パターンA:「公式サイト最安値!今なら10%OFF」
- パターンB:「新宿駅徒歩3分|カップルに人気のホテル」→ クリック率が高い方を採用
ランディングページのABテストではリスティング広告のリンク先を変えて広告を追加することで、最適化が進みます。
- パターンA:画像をメインにしたページ
- パターンB:口コミを強調したページ→ コンバージョン率が高い方を採用
データに基づいた改善策(例:地域ターゲティングの見直し)
ホテルのリスティング広告では、地域ターゲティングが重要です。
- 「地元のユーザー向け」 → 近隣エリアの宿泊需要を狙い、「週末旅行」「温泉宿」といったキーワードを活用
- 「遠方のユーザー向け」 → 空港や新幹線のある都市圏からの流入を狙い、「東京発 京都旅行」などのキーワードを設定
広告の効果が低い地域には入札額を下げ、効果が高い地域には積極的に予算を配分することも可能です。ただし自動入札の場合には調整ができない場合がありますので、注意が必要です。
リスティング広告のよくある失敗とその回避策
ホテル業界においてもリスティング広告は非常に費用対効果が高い広告ですが、上手くいかないケースもあります。以下では、よくある失敗例とその回避策について紹介します。
クリック率は高いが予約につながらない(原因と解決策)
リスティング広告では、適切なキーワード選定が成功のカギです。しかし、以下のようなキーワードを含めてしまうと、広告費ばかりかかり、予約にはつながらないケースが発生します。
失敗パターン | 例 | 問題点 |
---|---|---|
情報収集系キーワード | 「東京 ホテル おすすめ」 | まだ予約意欲が低く、クリックされてもCVRが低い |
無料・格安を含むキーワード | 「ホテル 無料 宿泊」 | 価格に敏感な層が多く、予約につながりにくい |
競合ホテルのブランド名 | 「○○ホテル 口コミ」 | 予約意図が競合に向いているため、自社のホテルにはつながりにくい |
予約意欲の高いユーザーに訴求するために、以下の対応を実施しましょう。
広告費用対効果が合わない(ROASを最大化する方法)
リスティング広告による集客ができていて予約の獲得もできているけど、費用対効果が合わないという場合には、適切な入札戦略が設定できていない可能性があります。単純に1クリックが50円となっていて費用対効果が合わなければ、1クリックを25円まで下げることで改善は見込めるでしょう。一方でインプレッション数やクリック数が減少することにより、コンバージョン数が減少する可能性もありますが、費用対効果が合わない広告を配信しつづけても赤字が拡大するだけですので、まずはクリック単価を抑えるようにしましょう。
またリスティング広告の管理画面上の費用対効果が合わないからといって諦めてしまうのは非常にもったいないです。新規ユーザーはリピートする可能性がありますので、顧客生涯価値:LTV(ライフタイムバリュー)を考えて広告戦略を考えなければなりません。LTVを高めるためには会員制度などを作ることでリピートを促進することなどが考えられます。
ターゲティングのミス(適切なセグメントの選定)
ターゲット設定を誤ると、広告が意図しないユーザーに配信され、クリックは増えるものの予約につながらないという事態が発生します。
よくあるターゲティングのミスマッチの例として下記が挙げられます。
Google広告の「オーディエンスインサイト」や「地域別パフォーマンスレポート」を活用し、効果的なターゲティングを行いましょう。
まとめ
本記事では、ホテル業界におけるリスティング広告の基本から、効果的な設計方法、広告運用の改善ポイント、よくある失敗とその回避策までを詳しく解説しました。最後に、重要なポイントを整理し、効果的な広告運用のためのチェックリストと、次に取るべきアクションについて紹介します。
効果的な広告運用のためのチェックリスト
🔲 ターゲティングが適切か?
- 地域・年齢・デバイスごとに最適な設定になっているか?
- 予約意欲の高いユーザーに広告が届いているか?
🔲 キーワード選定は正しいか?
- 予約意向の高いキーワードを選定しているか?
- 除外キーワードを設定し、無駄なクリックを防いでいるか?
🔲 広告文は魅力的か?
- 料金・特典・期間限定オファーを明確に伝えているか?
- 広告文とLPの内容が一致しているか?
🔲 LP(ランディングページ)は最適化されているか?
- 予約ボタンが目立つ位置にあるか?
- スマホ対応されており、スムーズに予約できるか?
- ページの読み込み速度が遅くないか?
🔲 広告のパフォーマンスを定期的に分析しているか?
- CTR(クリック率)、CVR(コンバージョン率)、ROAS(広告費回収率)をチェックしているか?
- A/Bテストを行い、最も効果の高い広告を選定しているか?
このチェックリストを定期的に見直し、最適化を続けることで、広告効果を最大限に引き出すことができます。
次のアクション(無料ツールの紹介・広告運用代行の検討など)
「実際に広告運用を始めたいが、どこから手をつければいいかわからない…」という方は、まず以下の無料ツールを活用してみましょう。
無料で使える広告サポートツール
- Googleキーワードプランナー(効果的なキーワードの発見)
- Google Analytics(ユーザーの行動を詳細に分析)
広告運用をプロに任せるのも一つの手
「自社で広告運用をするのが難しい」「より効果を高めたい」という場合は、リスティング広告の運用代行サービスの利用も検討してみましょう。プロに依頼することで、無駄な広告費を削減し、ROASを最大化できます。
最後に
リスティング広告の成功には、継続的な改善とデータ分析が欠かせません。本記事で紹介した方法を参考に、実践を積み重ねていきましょう。
まずは、キーワード選定と広告文の最適化から始めるのがオススメです。小さな改善の積み重ねが、大きな成果につながりますので頑張りましょう!